プリザーブドフラワーの特徴/取り扱い方法/保管方法
プリザーブドフラワー(preserved flower)のプリザーブド(preserved)とは、「保存された」という意味。
生花に特殊な加工を施すことで、長期間保存する事ができるよう、専用の溶液を用いて加工させた花の事です。
プリザーブドフラワーは“保存された花”という意味です。
※ブリザーブドと間違えて使用している人もいるのでご注意ください。
プリザーブドフラワーの長所
・プリザーブドフラワーは、生花のままの風合いやを長期間楽しめる事です。
・プリザーブドフラワーは、湿気の少ないヨーロッパでは10年以上美しいままが維持されると言われていますが、日本の気候の場合、1~2年程で劣化するケースが多いようです。
・プリザーブドフラワーは、水分がないドライフラワーと異なり、花びらの鮮やかさは生花と比べても違いがわからないくらいで、柔らかい弾力と、みずみずしさを保っています。触ったらすぐに伝わります。
・プリザーブドフラワーは、元々生花に含まれている水分を抜き、特殊な液と水分を入れ替えることで長く綺麗な状態を保つことが出来ており、それによりバクテリアの発生を抑える事ができます。
・プリザーブドフラワーには生花やドライフラワーのような茎がなく、花首だけのものが多いです。
バラなどの花は、花首だけの状態にしてから加工を行うからです。
かすみ草や、千日紅は茎から液を吸い上げる形で加工を行うため、茎もついており、茎も花と同じ色がつきます。
・プリザーブドフラワーのバラ(ローズ)のガクの部分が取れていることがあります。バラはガクで花びらを支えているため、ガクを取れたままにしておくと花びらがバラバラになります。ガクが取れた時はそのままにせず、グルーやボンドで元の位置につけます。ガクが無くなったり、切れて使えない状態の場合は、ガクがあってであろう位置をグルーで固め、補強してから使用します。
・プリザーブドフラワーは成長はしません。見た目は生花ですが、生き物としての機能と性質は失われています。
・プリザーブドフラワーは、特殊な液で生花の瑞々しさと保つ加工を行いますが、同時に染色も行います。なので、カラーバリエーションは豊富です。自然界には無いようなカラーの商品も可能になるのも魅力の一つです。
・プリザーブドフラワーは香りはありません。無臭です。これを、残念がる方もいれば、良い場合もあります。
病院へのお見舞いや、香りが苦手な方などには向いています。また、プリザーブドフラワー用の香水なども販売されているので、自由に香りづけすることも可能です。
プリザーブドフラワーの短所
・高温多湿に弱い商品です。湿気を含むと劣化が進みますので気をつけましょう。
・直射日光などの紫外線によって褪色(たいしょく:色があせること)します。
蛍光灯、白熱灯でも褪色しますので注意しましょう。
・プリザーブドフラワーは色移りする商品です。壁や布などに長時間触れると色移りします。
リースなどの壁掛け商品や、壁近くに飾る場合、コサージュなど洋服につけるものは色移りに注意しましょう。
仏壇など、漆塗りの上にプリザーブドフラワーの花びらが落ちたままにしておくと変色する恐れがあります。
・乾燥が進むと、花びらがひび割れることがあります。エアコンの風などが直接当たらないようにしましょう。
・プリザーブドフラワーは、生花よりも約3~5倍ほど高額な商品です。生花に比べて高い印象ですが、長く綺麗が続くので、結果、プリザーブドフラワーを購入した方が経済的と言えるでしょう。
・プリザーブドフラワーに出来る花は限られています。生花よりも種類が少ないのが現状です。
プリザーブドフラワーの取り扱い時の注意点
プリザーブドフラワーを取扱う際に知っておいた方が良いことや、保管場所について、注意点を説明します。
・直射日光
プリザーブドフラワーは、日光による紫外線や照明器具の光に弱く、直接あたるち褪色します。カーテンなどが色褪せるのと同じように色が落ちて来ます。光が直接当たらないような場所で保管するかしないかで、綺麗な状態の持ちが違ってくるので気をつけましょう。
・高温多湿
プリザーブドフラワーに最も適しているのは、湿度30%、温度18~22度と言われています。
高温多湿の場所に保管すると、カビが生じてきます。リーフにおいては葉脈に定着させた着色液が染み出して、色が抜けて垂れ落ちることもあります。また、染み出した液が原因でカビが発生し、全体にカビが行き渡ることもあります。
劣化が進み、花びらのひび割れやドライフラワーのような質感に近づくこともあります。
洗面台や加湿器の下、北側の部屋、押し入れなどは避けた方が良いでしょう。なるべく涼しい場所で換気に気をつけ保管するようにしましょう。
・水
プリザーブドフラワーに水は厳禁です。生花のように見えるので、ご家族など間違えて水を与える場合があるので注意しましょう。
・エアコンの風など
花びらに直接エアコンの風を受けると、乾燥によりひび割れる恐れがあるので注意しましょう。
・プリザーブドフラワーは繊細な商品
プリザーブドフラワーはガラス細工のように繊細な商品です。バラに関しては、額の部分が乾燥しており取れやすいのですが、額が取れてしまうと花びらはバラバラと落ちてしまいます。ギュッと持ったりせず、丁寧に扱わないと花びらが破けたり、花が潰れる原因になります。取扱いは生花を扱うのと同時に、衝撃を与えないようにする注意が必要です。
・色移り
濃い色の花の場合、花びらを触ったり、ワイヤリングの際など茎部分から液が出て、手に色が付着します。白い花なども同時にワイヤリングする際には注意をしましょう。
ハサミの刃にも色がつくので注意しましょう。
・花びらの切れ
プリザーブドフラワーはちょっとした衝撃でも花びらが傷ついてしまう場合があります。
また、ひび割れることもあります。その場合は、ひび割れた部分を花びらのカーブにそってハサミでカットし綺麗な状態にしてアレンジしましょう。
大きくひび割れてしまった時は諦めて、新しいものを使いましょう。
・ほこり・湿気
アレンジメントにほこりが付いてしまった場合は、ドライヤーの冷たい風を弱く当ててやさしく吹き飛ばすようにしてください。
プリザーブドフラワーの花びらは繊細な為、気を付けて作業を行いましょう。
湿気やほこりから花を守りたい場合は、適した環境下(湿度が30%、温度が18~22度)で保管するか、クリアボックスやショーケースなど密閉されたケースに入れましょう。
・花びらの透け
梅雨の時期や湿気が多い場所などに長時間放置しておくと、花に吸着させた着色料が抜け出てしまって、花びらが透けた状態になる事があります。こうした状態のまま更に放置すると状態は悪化していく一方で、最後はどうやっても元の状態に戻らないという事になってしまいます。
こうした症状が進行しないよう早い段階で対処すれば、花びらの透けは改善され元の状態に戻ります。透けが確認できた場合は、早急にプラスチックケースやポリ袋などの密閉した空間へプリザーブドフラワーを移し、除湿剤(シリカゲル)を一緒に入れて2~3日置くと、元の質感に戻ります。ただし、1週間程様子を見ても改善が見られない場合、それ以上の復元は不可能であると判断して新しい花と交換しましょう。
・プリザーブドフラワーやグリーンに虫がついてしまったら
虫は、植物が放つ香りなどに誘われて花の蜜や樹液を求めます。しかしプリザーブドフラワーは植物としての成分をほとんど失っている為、基本的に虫がついてしまうといった事はありません。ただし高温多湿の場所などにプリザーブドフラワーやグリーン類を保管した場合は、まれに虫が発生してしまう場合があります。
もし虫がついてしまった場合は、繁殖する前に早急に対処する必要があります。まずは、虫の発生した場所をハサミなどでカットしてその部分を廃棄します。虫の発生を防止する為にはその予防をするのが最も効果的です。高温多湿な場所でプリザーブドフラワーを保管しない事はもちろん、保管時は防虫剤や防湿材を添えて保管するのも効果が高いと言えます。
ベルベットリーフ(P31参照)などには、肉眼ではわからないほどの大きさの卵が付いている場合があります。その場合、電子レンジで温めるか、一枚ずつアイロンをかけるなどして卵がふ化する前に高温で駆除します。
・カビ
高温多湿の場所などでプリザーブドフラワーやグリーン類を保管した場合、まれに花びらやリーフ類にカビが発生してしまう場合があります。
もしカビが発生してしまった場合は、発生した部分をハサミでカットしてその部分を廃棄してください。カビの繁殖が特にひどい場合は廃棄して新しいものと交換し、保管場所を見直しましょう。
プリザーブドフラワーの保存について
プリザーブドフラワーの寿命は保存される環境に大きく左右されます。その為、良好な環境であれば何十年も変色、変質なく保存されます。
劣悪な環境においても、生花のようにすぐ枯れてしまう事はありません。しかし、湿気の多い場所、湿度の高い場所に長時間保管すると、褪色、花びらの切れが生じます。
①日本における保存期間
日本は湿気の多い国である為、プリザーブドフラワーを箱から出した状態の美しさを保てるのは、1~2年が目安となります。
ただし枯れる事はなく、“枯れない”といった意味では10~20年の保存が可能です。
②プレゼントする際の適切な説明方法
永遠に枯れないという言葉で説明される事が多いプリザーブドフラワーですが、保管状態によって品質が大きく左右されるという事を説明することを説明しておきましょう。
以下の3点は説明の上、プレゼントしましょう。
①各デザイナーにより保存期間については様々なとらえ方がありますが、10年経過しても“枯れない”事は事実だと言う事。
②ただし、箱から出した状態の美しさを保てるのは、日本の環境で考えると、1~2年が目安であるという事。
③水も要らずに1~2年の間花を飾れるという感覚で楽しんでもらえるという事。
③正しい保管方法
・花箱に入った状態の場合
床には湿気がたまりやすいので、箱に入れたまま棚の上に置くなどして、できるだけ床より高い位置に保管すると良いでしょう。
・グリーン類の場合
束のものは、そのまま立てて保管しましょう。
・アレンジメントの場合
高温多湿の場所を避け、時々花に付着したほこりを払います。
直射日光が直接当たる場所や蛍光灯の光が明るい部屋では、褪色が早い傾向がある為、注意する必要があります。
・クリアボックスに入ったアレンジメントの場合
通常はこの状態で飾った方が綺麗に長持ちします。
湿気がこもってしまった場合、蓋をあけて換気させてください。
夏場など湿気が多い場合は、ボックスの中に除湿剤を入れておくと湿気防止になります。